“不動産オーナー様向け” 消費税インボイス制度
制 度 の 概 要
①インボイス制度とは
令和5年10月1日以降に導入される仕入税額控除の方式です。インボイス制度導入後は、
売手側は買手に対しインボイスを交付し、かつ、交付したインボイスの写しを保存しなけ
ればなりません。
また、買手側は、原則としてインボイスの保存が仕入税額控除の要件となり、免税事業
者等から仕入れた場合は仕入税額控除ができなくなります。
②適格請求書発行事業者の登録
インボイスを発行するためには、事前に税務署に登録申請を行い、適格請求書発行事業者
となる必要があります。
(※1)令和4年12月23日「令和5年度税制改正の大綱」が閣議決定されたのに基づき、
当該事業者が令和5年4月1日以後に困難な事情の記載がない登録申請書が提出
されたとしても、令和5年9月30日までの申請については、インボイス制度が
開始する令和5年10月1日を登録開始日として登録されることとなりました。
③請求書の記載事項
インボイスには、以下の事項を記載しなければなりません。
(ア)適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
(イ)取引年月日
(ウ)取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
(エ)税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率、消費税額等
(オ)書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
④仕入税額控除の経過措置
インボイス制度導入後の一定期間については、免税事業者等からの課税仕入れについても
部分的に仕入税額控除が可能となる経過措置が設けられています。
どのような対応が必要か?
①適格請求書発行事業者の登録をするかどうか
免税事業者はインボイスを発行することはできないため、事業者向けの賃貸物件や駐車場の
貸付などを行っている方などは取引先の事業者の消費税の計算に影響を及ぼす可能性があります。
免税事業者は次のような場合を想定して適格請求書発行事業者の登録をするかどうか検討する
必要があります。なお、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録をする場合には、課税事業者
となる必要があります。
(ア)アパートの入居者向けに駐車場を貸し付けている場合など取引先が事業者でない場合は必ず
しも適格請求書発行事業者の登録をする必要はありません。
(イ)適格請求書発行事業者になると消費税の申告・納付義務が発生します。
(ウ)取引先から適格請求書発行事業者であるかの確認やインボイスの発行を求められる可能性が
あります。
(エ)適格請求書発行事業者でない場合には、消費税分の値引き要求や取引の見直しなどの懸念が
生じます。
②簡易課税の検討
不動産賃貸業者が消費税の課税事業者となる場合には、不動産賃貸業者の必要経費は固定資産
税や借入金利子、減価償却費など課税仕入れに該当しないものが多いため、簡易課税制度を選択
する方が有利となる可能性があります。したがって、適格請求書発行事業者の登録と併せて税理
士と相談のうえ消費税の課税方式も検討した方が良いでしょう。
③口座振替家賃の取り扱い
口座振替等により支払われる家賃などは、通常その都度請求書や領収書が発行されないことが
多いでしょう。このような場合には、登録番号などの必要事項を記載した契約書と日付と金額が
記載された通帳を合わせて保存することにより仕入税額控除の要件を満たすことができます。
したがって、今後インボイスの導入に備え契約書の整備が必要となってきます。
なお、不動産の賃貸借契約のように長期にわたる取引の場合、途中で適格請求書発行事業者で
なくなることがありますので、適格請求書発行事業者公表サイトで貸主が適格請求書発行事業者
であるか確認したうえで仕入税額控除の計算を行う必要があります。
④経理業務の対応
インボイス制度の導入により経理業務の事務負担増加が予想されます。適格請求書発行事業者
からの仕入れか免税事業者からの仕入れを区別して経理する必要があります。